一寸先はヤミがいい

〜薬剤師ガンサバイバー 今日も前向きに〜

86 エナジーム(5) 

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日本人の美意識(感性) 

私は18歳の時に初めてアメリカへホームステイに行きました。

1か月間、アメリカの家庭でご家族と一緒に過ごし、もう1か月はアメリカを旅しました。

 

英語はもともと好きだったのですが、日本で大学入試試験のために一生懸命勉強した英語をいざ使おうとした瞬間、全く通じなかった苦い思いがあります。

反対に、アメリカ人からは「どうしてそんな難しい英語を知っているの?」と言われてびっくりしたのを覚えています。

日常会話ではほとんど使わない単語ばかり覚えていたのですね。

それがいけなかったとは思いませんが、もっと日常会話を勉強するべきだと痛感しました。

あれから50年近い月日が過ぎ、今では小学校で英語を習うようになりましたし、帰国子女が増え、流暢に英語を話す若者が増えてきたことは喜ばしいことだと思っています。

 

外国に行って初めて知る自国のすばらしさ!!

まさに自分はなんと日本のことを知らずにいたのかを痛感しました。

 

さいころから父の影響で、美術鑑賞が好きで、我が家には有名な画家の絵画本がいつもありました。

父は西洋絵画が好きだったので、日本画の本は一冊もなかったと記憶しています。

特に私の好きな画家は「ビュッフェ」、繊細な線で形作る、シャープなフォルムに魅了されました。

 

一方、小さいころから茶道を習い、着物を着ることに慣れていました。

着物や帯、草履や帯どめ・帯揚げや茶椀・棗・濃茶器・袱紗・茶杓・扇子・茶筅など、

日本人が美しいと感じていたものが、私の美意識を作ってくれました。

 

このように、文化の違う西洋と日本、美意識の違いをはっきりと感じないまま大人になった気がします。

私だけでなく、ほとんどの人々が何の抵抗もなく、西欧の文化を受け入れたのだと思います。

 

明治維新では脱亜欧入と言って、積極的に西欧の文化を取り入れ、西欧に早く追いつこうと必死だったでしょう。

そこに敗戦で追い打ちをかけられ、どんどんアメリカ文化を取り入れざるを得なくなったと思います。

日本人は日本の美意識を知らされることなく、一方的に西欧を良しとしてきたのではないでしょうか?

外国の人達によって日本の良さを指摘されて再発見するのですから、情けないばかりです。

 

日本文学者であるドナルド・キーン氏は「日本人の美意識」で日本人の美の概念に対して中心的な特徴として以下のように述べています。

 

「暗示、または余情」、「いびつさ、ないし不規則性」、「簡潔」、「ほろび易さ」である。こうした互いに関係する美的概念は、日本人の美的表現の、最も代表的なものを指し示している。

とはいえ、これらの反対概念、すなわち「誇張」、「規則性」、「農饒」、そして「持続性」なども、決してなくはないこと、これは繰り返すまでもない。

引用元:ドナルド・キーン著「日本人の美意識」

 

magazine.wadaiko-kohasu.com

 

元東大教授、現在大原美術館館長の高階秀爾氏によると、

日本の美意識の根底には「うつくし」「きよし」がある。

古代の日本人は小さいものや、汚れがない対象に対して「美しい」という感情を持っていたのです。

そして必要のないものは描かない、引き算の美学とも呼べばいいのでしょうか、「余白」を好みます。

 

ところが、西洋では、ギリシャの美術品を見ればわかるように、富や豊かさ、真、善、美が表現され迫力そのものが違います。

彫刻の持つ力強さをみれば、それが健康に裏打ちされたものであることがわかります。

むしろ神に近い能力を示しているのです。

 

suikyoblog.com

book.asahi.com

 

明治以来、私たちは欧米のものが良くて、日本のものを捨ててきたように思うのです。

このところ一部で、日本のものの良さを見直そうとしているようですが、まだまだほとんどの人が欧米至上主義のように思えます。

日本の本来の美意識・感性をもっと見直すべきではないでしょうか。

外国に行ってみれば、どれほど日本が素晴らしい国か実感できると思いますし、私たちはどれほど日本のことを知らないのかもわかります。

日本人であることにもっと誇りを持つためには、もっと日本のことを知らなければならないと思います。

子どものころから日本の、日本人の美意識や感性を勉強するためには、日本画や伝統工芸品などを見せて、歴史的背景や、作品の生まれた理由などを良く説明することが大事なのではないでしょうか。

 

外国に行くと、幼児や児童を集めて、美術館で講義する先生の姿をよく目にします。

その国の画家が描いた絵画や作家の作った彫刻・工芸品を先生がしっかり子どもたちに教えているのです。

子どもたちはみんな真剣に先生の話に耳を傾けています。

日本でこのような教育がなぜできないのかをよく考える必要があると思います。

 

私は日本に生まれて本当に良かったと思っています。

着物は世界一素晴らしい民族衣装だと思いますし、俳句や短歌のように四季の移り変わりや繊細な心情を凝縮して表すものは日本以外にないと思っています。

 

日本の良さを知った上で、西欧の文化を取り入れるのが順番だと思います。

日本独自の文化を作り上げるには、やはり日本の伝統を大事にする必要があるのではないでしょうか?

 

では今日も1日前向きに!!