75 「がん」との付き合い方(2)
前回の続きです。
では、何もしないのが最善の治療なのか?
「エコ・エボ」指標
エコ=生態のことで、がんの発生している環境のことを意味しています。
・がん細胞の生息地は栄養豊富か?栄養の少ない不毛の地か?
・免疫細胞の見回りが厳しいのか?
・正常細胞との競争が激しいのか?
・不良細胞が生きやすい有毒な環境か?
エボ=進化のこと。
・がん細胞内に大きな変異パッチが数個あるだけなのか?
・がん細胞内に小さな変異パッチが大量にあるのか?
変異パッチ:がん細胞は、1つの細胞で成立しているわけではなく、変異した細胞集団のパッチワークになっていることがわかっている。
この細胞集団はそのままであればがんにならないが、染色体に異常が発生するとがんになりうる。
というわけで、がん細胞がどれだけ早く進化しているか?生息地でどれほど勢いよく育っているのか?を見極める指標であり、この指標を使って、がんを16のタイプに分類することができた。
点数の低い腫瘍は、資源が少なく多様性に乏しい砂漠のような環境にあるため、進化も繁栄も起こらないもので、1つか2つの標的療法をする。
点数の中間の腫瘍は、正常細胞と共存しているため、正しい順序で正しい選択圧を慎重に与えるか、もしくは免疫療法をする。
点数の高い腫瘍は、多様な細胞集団が、勢力図を常に書き換えていて、出現しては免疫細胞に攻撃されて消されている状態なので、適応療法で長期的コントロールするか、有毒な環境を改善してがん細胞にとって住みにくい生息地にする「エコ療法」を用いる。
適応療法:庭の手入れをすると考える。常に生えてくる雑草を抜いて、きれいな庭を維持する方法。
チャールズ・ダーウィンの「種の起源」の中で、
新種の出現(種の起源)は生物が選択圧に直面して適応と変化を迫られたことによる。
と1859年に発表していたのですから、結局がんも同じことが言えると今頃分かったようです。自然選択、進化論は本当にすごい発見だったと思います。
昨今のように、晩婚化、高齢出産が続けば、私たちが生きている時代は無理でしょうが、人間は高齢でも出産できる、100歳以上生きられるように進化するかもしれませんね。
なぜって、子孫を残し、子育てしている間はがんにならないはずですからね。
私はステージⅣの乳がんと診断されて、抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)による治療、手術、放射線、標的薬による治療を終了して、このブログを書き始めたときに、がんは戦える病気、標準治療は絶対にやるべき、と声高に言いましたが、今、がん研究は、抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)や放射線によるがん細胞への選択圧も考慮する時代になっています。
私は幸いにも3年の間、再発せずに生きることができています。
そして今、がんであることを忘れてしまうほどです。
今後の治療は、標的療法・免疫療法・適応療法が主流になることでしょう。
そして、「がんですか、それなら付き合い方はわかっています!!」と誰もが言える時代になっていくと思います。
がんは長期的にコントロールできる病気になりつつあります。
恐れることなく、気長に頑張りましょう。
そして長期的な病気なら、いつ再発する?と心配せずに、心穏やかに、楽しい人生を送りましょう。
心理的な面も今後はとても大事になってくるでしょうからね。
いくら長く生きられるようになっても、生物は必ず死にます。
死があるから、生きられるのではないでしょうか?
では明日も1日前向きに!!