74 「がん」との付き合い方(1)
進化が生んだ怪物
キャット・アーニー著
ヒトはなぜ「がん」になるのかー進化が生んだ怪物―
を読み終えて、今までがんはどのような研究がなされてきたのか、また現在のがん研究がどのようになっているのかを知りました。
がんは他の病気と同じように、完治はできなくても、長く付き合っていける病気になるだろうと思います。
染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。
遺伝子は染色体内にあり、染色体は主に細胞の核にあります。
1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。
人間のすべての細胞には23対(計46本)の染色体が入っています。
通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方を父親から受け継ぎます。
23番目の対が性染色体です(XまたはY)。Xは女性、Yは男性です。
DNAとは「デオキシリボ核酸」を略したものです。
DNAはヒトで言えば、60兆個にも及ぶすべての細胞に存在し、DNAの情報に基づいて体の細胞、器官、臓器が作られていくため、「体の設計図」とも表現されます。
ゲノム解析とはヒト染色体の遺伝情報(DNA配列)を読みとり、染色体のどこにどんな役割の遺伝子が存在するかを明らかにすることです。
「この50年、あまりにも遺伝子に偏った研究が続いたため、人体を機械のように見たり、細胞の中の遺伝子と分子を電子回路かコンピューター・コードの構造要素のように見たりする傾向が定着してしまった。
生物学のすべてが、進化の視点なしに意味をなさないように、がんのすべてもまた進化の視点なしには意味をなさない。このシンプルかつ厳然たる事実を認めないことが、進行転移がんの予後がほとんど改善しない理由だ。」
1953年のDNAの二重らせん構造の発見から50周年となる2003年4月、ヒトゲノムの解読終了が宣言された。ヒトゲノム計画の成果は基本設計図を手にしたという点で非常に大事だった。でも、それはゲノム研究の全容からいえば、“とっかかり”ができたというだけ。
「がんは人間だけがなる現代病ではなく、生物の基本システムに最初から組み込まれた“バグ”であると言える。
したがって、すべての生物はがんになる。
がんのルーツをたどると、地球上に初めて多細胞生物が誕生した時点に行きつく。
そしてその多細胞生物の共同社会が、がん細胞を生む土壌になっている。
発がん物質はどこにでもあるし、遺伝や感染症が原因のこともある。
がんを個人の努力で避けることはほぼ不可能です。
このことはもっと世間に知らせるべきです。
がんになったとき、その人の行動や選択を責めるような風潮をなくすためにも。」
「ヒトが生殖年齢に達する前にがんになるようなら、自然選択で淘汰され、ここまで繁栄しなかっただろう。
ヒトのがんの90%が50歳以降に出現するのは、完全に理にかなっている。」
「生物の進化は、以下の①か②のどちらかです。
- 短く危険な数年間のうちにできるだけ多くの子孫を作るよう進化する。
- ゆっくり大きく育って捕食する側に回り、遅くに子孫を産んで、長く子育てするように進化する。
私たちは、人生の最盛期を健康で過ごし、出産と子育てが終わったら不健康になってもいいように進化してきた。」
がんとの戦争・・・と言った考え方は、がんに勝てるかもしれないという幻想を私たちに与えてしまった。
今後は研究者たちが、がんは当初考えていたより複雑だったと発表し、今後のがん研究の方針を変更する勇気を持つことが大事だといっています。
2014年、インスティテュート・オブ・キャンサー・リサーチ(ICR)の『進化とがんの研究センター』設立の趣旨は、次のようなものでした。
自然選択の仕組みを考えれば、耐性の出現は避けられず、進行がんを治すことはできない。
そうであれば、慢性疾患のような状態にし、余命を数カ月ではなく、数年単位に延ばすことを目指したい。
では私たちの最終ゴールって何なのでしょう?
十分に長く生きてから、がんより先に死ぬことだと思いませんか?
生きること=がんになることは表裏一体です。
がんになった人が、20年、30年生き延びることができれば、薬の影響を穏やかにすることや、心理的サポートに重点が移って行くことでしょう。
がんの診断を受けたときに、
「わかりました。がんとの付き合い方なら知っています。」と誰もが答えられるようなそんな日が来ることを願っています。
がんとの付き合い方
- 予防
- 早期発見と悪い細胞かどうかを見分ける検査法の確立
- 長期の治療法
進行がんを長期的にコントロールするカギは、積極的な計画管理にある。
化学療法と標的療法は「進化のるつぼ」と化しているがんに強力な選択圧を与える可能性があり、その両方が原因で悪化することも考えられる。
選択圧:生物種に存在する突然変異を選択して、一定の方向に進化させる現象をいう。この自然の力を選択圧とよぶ。
では、何もしないのが最善の治療なのか?
はっきりしていることは、1つの特効薬でがんを治そうという考え方は、ショットガンでハリケーンを止めるくらい無意味なことだということです。
次回をお楽しみに。
では今日も1日前向きに!!