51 新型コロナウィルスのパンデミックがもたらしたもの(3)
マルクス・ガブリエル(2)
日本人特有のコミュニケーション
日本人は先進国の中でも最も社会的に孤立しているというデータがある(ミシガン大学「世界価値観調査」)。
社会的に孤立するとは、家族、友人、同僚以外の人と会う機会が少ないということです。
日本人を含むアジア人は共同体を、ヨーロッパ人は個を尊重するという悪しきステレオタイプがありますが、この結果はこのステレオタイプを否定する社会的証拠になり得ます。
日本人特有のコミュニケーション①
日本では様々な理由でデジタルな交流が非常に普及しています。
その原因のひとつは、東京の住環境と人口の多さでしょう。
狭い面積に人がひしめく世界一の大都市です。
このような状況が人を孤立させています。
日本はおそらくもっともデジタルなインフラに対する批判が少ない国と言えるでしょう。
中国のような監視国家が国民にデジタル化を強制しているのではなく、国民が自ら進んで望んでやっているのです。
常にサイバー独裁の最先端を行っていたのです。
日本の電車のシステムは完璧ですね。
でもホームで列に並び、来たのがピンク色の女性専用車両だったら、私は別の車両へ移動しなければならない。
もしそのシステムを理解せず、従わなかったら、いわゆる白手袋の駅員がやってきて追い出されることもあります。
これが、ソフトな独裁国家ということです。
このように完璧になめらかな機能性には、ダークサイド(暗黒面)があります。
精神性や美が高まるというよい面もありますが。
日本文化は非常に発達していて、誰もが美の共通認識を持っており、食べ物も、庭園も、すべて完璧に秩序が保たれている。
それが日本文化のすばらしい面であり、よい面です。
でも、暗黒の力もあるのです。
抑圧されたもののすべてが、その力です。
時間に遅れてはいけない、問題を起こしてはいけないと、まるで精神性まで抑えるかのような力です。
日本人特有のコミュニケーション②
日本人は互いに意見が対立したとき、他の地域とはずいぶん異なるやり方でマネジメントします。
対立の合理的な解消のプロセスや本物のディベートを導入する余地は、もっとあるはずです。日本人の一般的な生活の中に、そういったものを増やすべきだと思うのです。
対立を避けようとするのではなく、むしろ対立を増やす、対立にさらされる機会を増やすべきです。
そして、しっかりディベートを行うのです。
彼のこの日本人の見方は、衝撃的でした。
特に、「ソフトな独裁国家」という言葉にはっとさせられました。
太平洋戦争に向かった私たちの先人たちのDNAは今引き継がれている、と思ったのです。
今度はテクノロジーへ服従させられるのですから、ここでしっかりと、日本人の長所と短所をきちんと認識しなければいけないと思いました。
また、ディベートは日本人の一番苦手なことではないでしょうか?
「事なかれ主義」が根底にあって、文句があっても言わない、争いや衝突を避けて振る舞う傾向があると思います。
今の若者はもっとこの傾向が強くなっているように思うのですが・・・。
私の小さいころ、妻は、夫に言い返すなんてもってのほか。
従順な妻が良妻と言われていましたが、私の母は良く父に歯向かっていました。
父と喧嘩すると、必ず掃除を始める人でした。はたきでそこいら中をはたいていました。
現代はどうでしょう。いろいろな夫婦のあり方があるでしょうが、私の年齢でまともにディベートできる夫婦はあまり見たことがありません。
年を重ねて頭に血が上ると死ぬかもしれない?と思って避けてしまうこともあるでしょうが、もともとディベートしてきていないからかもしれません。
若い夫婦はどうでしょう。
お互いに自分の意見を持っているでしょうから、私たちの時代よりは夫婦で話し合うことができるでしょうが、それでもまだまだディベートはできていないと思います。
ディベートができるようになったからと言って、夫婦関係が良くなり、離婚率が下がるわけではないのでしょうね。
冷静にディベートができるようになれば、無駄に我慢することもなくなり、生活は楽になっていくと思いますが、どうでしょうか?
では、今日も1日前向きに!!