12 うつになる前に(1)
うつ症状とは
うつ症状とは、いわゆる“抑うつ気分”や意欲や喜びの低下です。
これは人によってさまざまな症状となって現れます。
例えば、眠れない、食欲低下、動作が緩慢になる、怒りっぽくなる、全身に痛みが出る、
などなど。
進行すると感情の起伏がなくなり、生きている実感がなく、自己否定的になり、”死にたい”と思うようになり、自殺企図や自殺に至ることもあります。
人によって様々なうつ症状ですが、これは誰にだって起こりえるし、軽いうつ症状は誰でも経験していることと思います。
ではそのうつ症状にスイッチが入り、加速度的に悪化してしまうのはなぜでしょう?
精神症状が起こるメカニズムはこうです。
人の脳の神経は、シナプスという情報伝達構造(情報を出す側と受け取る側)から成り立っています。そこにはいくつかの神経伝達物質が存在します。
情報を出す側からは、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン(総称してモノアミン)が放出されます。
情報を受け取る側にはモノアミンを受け取るそれぞれの受容体があります。
セロトニンは心を落ち着かせ(抑制型)、ノルアドレナリンやドパミンは活動性を高めて楽しみを感じさせる(興奮型)とされています。
このモノアミンンが減ることで、うつ病がひき起こされると考えられています。
ではなぜこのモノアミンが減少するのでしょう。
うつ病とストレス
原因はストレスと言われていますが、ストレスなんて、誰にもありますよね。
ストレスに強い人、弱い人(遺伝的要因)がいること、周りに助けてくれる人がいるかどうか(環境要因)、また、予期せぬ大きなストレス(離婚・倒産・死別・解雇)かどうかによっても違ってくるでしょう。
うつ病は誰にでも起こりうる病気です。ですから、正しい知識を持てば、予防できる病気なのです。
ストレスとうまく付き合う
人間の脳は、ストレスに対し準備ができていないと、大きいストレスが来た時に反応が間に合わないことがあります。
ストレスに対する準備とは?
まずは経験による準備です。
学生時代に、友達・先生・先輩や後輩という人間関係の中で、理不尽なことに対応するトレーニングを積むことです。
これはしかしながら一方で、忍耐力や精神力が鍛えられすぎて、ストレスを一人で抱え込んでしまうことにもなりかねません。
経験さえ積めばうつ病にならないとは言えないのです。
では、どう付き合えばうつ病にならないのでしょうか?
ストレスは人間社会には必ずあるものですし、立ち向かわなければならないことだとも思います。人間が地球上に誕生して以来、ずっとストレスに立ち向かう術を持っていたはずです。
特に日本人はそれができていた民族だったはずです。
社会があまりにも早く移り変わり、生活環境も昔とはずいぶん変わってきていますし、私たちのストレスの質も変わってきているのかもしれません。
上手にストレスを交す術を持つことが大事ではないかと思います。
忍者の投げる手裏剣をまともの受けたのではダメージがありすぎます。うまくかわしていくことが大事なのです。
いわゆる処世術を身につけることです。つまり、人生を生き抜くトレーニングです。
昔は大人たちを見ながら、または教えてもらいながら、そして何よりもいろいろな経験をしながら自然に身につけて行ったと思うのですが、現代は子どもに対して過保護(子供が苦しむ前に手を貸してしまう)であったり、人間関係が希薄(他人を傷つけないように付き合う)であるがゆえに、コミュニケーションがうまく取れない人が多くなってきたように思います。
人間はある程度の負荷をかけないと心も身体も脆弱になってしまいます。
ちょうど花粉症の時期ですので、たとえてみましょう。
花粉症の治療に減感作法があります。これは身体の中に少しずつ花粉を入れていく方法です。少しずつ入れることで、身体が花粉を異物と受け取らなくなるため、花粉症を発症しなくなるというわけです。
少しずつストレスを感じて行けば、それに対するトレーニングを積むことができます。
そうすれば手裏剣を投げられても対処する方法を知っているので、大きな傷を負わなくなるのです。
前にもお話した通り、ストレスに対する自分の受け止め方、対処方法を自分で見つける治療法です。
人間にはもともと対処できる力が備わっていると思うので、忘れてしまった本来の対処法を思い出したり、新たな対処法を見つけ、トレーニングしていくことでうつ病を治していこうとする方法です。
では、今日も前向きに!!