86 エナジーム(5)
日本人の美意識(感性)
私は18歳の時に初めてアメリカへホームステイに行きました。
1か月間、アメリカの家庭でご家族と一緒に過ごし、もう1か月はアメリカを旅しました。
英語はもともと好きだったのですが、日本で大学入試試験のために一生懸命勉強した英語をいざ使おうとした瞬間、全く通じなかった苦い思いがあります。
反対に、アメリカ人からは「どうしてそんな難しい英語を知っているの?」と言われてびっくりしたのを覚えています。
日常会話ではほとんど使わない単語ばかり覚えていたのですね。
それがいけなかったとは思いませんが、もっと日常会話を勉強するべきだと痛感しました。
あれから50年近い月日が過ぎ、今では小学校で英語を習うようになりましたし、帰国子女が増え、流暢に英語を話す若者が増えてきたことは喜ばしいことだと思っています。
外国に行って初めて知る自国のすばらしさ!!
まさに自分はなんと日本のことを知らずにいたのかを痛感しました。
小さいころから父の影響で、美術鑑賞が好きで、我が家には有名な画家の絵画本がいつもありました。
父は西洋絵画が好きだったので、日本画の本は一冊もなかったと記憶しています。
特に私の好きな画家は「ビュッフェ」、繊細な線で形作る、シャープなフォルムに魅了されました。
一方、小さいころから茶道を習い、着物を着ることに慣れていました。
着物や帯、草履や帯どめ・帯揚げや茶椀・棗・濃茶器・袱紗・茶杓・扇子・茶筅など、
日本人が美しいと感じていたものが、私の美意識を作ってくれました。
このように、文化の違う西洋と日本、美意識の違いをはっきりと感じないまま大人になった気がします。
私だけでなく、ほとんどの人々が何の抵抗もなく、西欧の文化を受け入れたのだと思います。
明治維新では脱亜欧入と言って、積極的に西欧の文化を取り入れ、西欧に早く追いつこうと必死だったでしょう。
そこに敗戦で追い打ちをかけられ、どんどんアメリカ文化を取り入れざるを得なくなったと思います。
日本人は日本の美意識を知らされることなく、一方的に西欧を良しとしてきたのではないでしょうか?
外国の人達によって日本の良さを指摘されて再発見するのですから、情けないばかりです。
日本文学者であるドナルド・キーン氏は「日本人の美意識」で日本人の美の概念に対して中心的な特徴として以下のように述べています。
「暗示、または余情」、「いびつさ、ないし不規則性」、「簡潔」、「ほろび易さ」である。こうした互いに関係する美的概念は、日本人の美的表現の、最も代表的なものを指し示している。
とはいえ、これらの反対概念、すなわち「誇張」、「規則性」、「農饒」、そして「持続性」なども、決してなくはないこと、これは繰り返すまでもない。
引用元:ドナルド・キーン著「日本人の美意識」
日本の美意識の根底には「うつくし」と「きよし」がある。
古代の日本人は小さいものや、汚れがない対象に対して「美しい」という感情を持っていたのです。
そして必要のないものは描かない、引き算の美学とも呼べばいいのでしょうか、「余白」を好みます。
ところが、西洋では、ギリシャの美術品を見ればわかるように、富や豊かさ、真、善、美が表現され迫力そのものが違います。
彫刻の持つ力強さをみれば、それが健康に裏打ちされたものであることがわかります。
むしろ神に近い能力を示しているのです。
明治以来、私たちは欧米のものが良くて、日本のものを捨ててきたように思うのです。
このところ一部で、日本のものの良さを見直そうとしているようですが、まだまだほとんどの人が欧米至上主義のように思えます。
日本の本来の美意識・感性をもっと見直すべきではないでしょうか。
外国に行ってみれば、どれほど日本が素晴らしい国か実感できると思いますし、私たちはどれほど日本のことを知らないのかもわかります。
日本人であることにもっと誇りを持つためには、もっと日本のことを知らなければならないと思います。
子どものころから日本の、日本人の美意識や感性を勉強するためには、日本画や伝統工芸品などを見せて、歴史的背景や、作品の生まれた理由などを良く説明することが大事なのではないでしょうか。
外国に行くと、幼児や児童を集めて、美術館で講義する先生の姿をよく目にします。
その国の画家が描いた絵画や作家の作った彫刻・工芸品を先生がしっかり子どもたちに教えているのです。
子どもたちはみんな真剣に先生の話に耳を傾けています。
日本でこのような教育がなぜできないのかをよく考える必要があると思います。
私は日本に生まれて本当に良かったと思っています。
着物は世界一素晴らしい民族衣装だと思いますし、俳句や短歌のように四季の移り変わりや繊細な心情を凝縮して表すものは日本以外にないと思っています。
日本の良さを知った上で、西欧の文化を取り入れるのが順番だと思います。
日本独自の文化を作り上げるには、やはり日本の伝統を大事にする必要があるのではないでしょうか?
では今日も1日前向きに!!
85 薬剤師あるある(17)
20年ぶりに認知症の新薬?
認知症は脳の神経細胞が徐々に脱落することによって、脳の処理機能が低下することにより、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出る病気です。
脳の神経細胞を再生し、神経細胞が死ぬのを防ぐ薬はまだ見つかっておらず、今後の研究の進展が待たれるところです。
原因ははっきりとはまだわかっていませんが、「脳に蓄積したアミロイドβの毒性で神経細胞が死滅して脳が委縮し、認知症を発症する」という「アミロイドβ仮説」は、2010年に提唱されて以来、最も有力な説として注目を集めました。
今日におけるアルツハイマー型認知症の新薬開発においても、このアミロイドβ仮説が主流となっています。
神経原繊維変化という現象です。
これは健康な神経細胞にタウたんぱくという物質が絡み合って起こるもので、アミロイドβ同様、不要な物質が溜まることで神経細胞の働きを悪くし、死滅させます。
認知症には以下の4つがあります。
- 物忘れと認知症 うっかり約束の時間や物をどこにしまったか忘れたりすることは、誰しもあるものです。
- アルツハイマー型認知症(約60%) 脳にアミロイドβという物質が沈着して、神経細胞の障害が起こります。
- 血管性認知症(約20%)
- レビー小体型認知症(約10%)
- 前頭側頭葉変性症
脳全体の活動が低下する場合は元気がなくなったり、意欲・やる気がなくなってしまいます。
このような場合には、脳を活性化する薬によって少し気力が回復する可能性があります。
また脳の神経細胞の働きのバランスが崩れると、すぐ怒ったりイライラしたりするような症状になる場合もありますが、このようなケースでは脳の活動を穏やかにしたり、神経活動のバランスを調節する薬が使われます。
実際の患者さんでは、意欲の低下とイライラが混在したりしますので、認知症の薬は数種類の薬を調節しながら服用することになります。
近年、認知症の早期診断と早期治療の重要性が強調されています。
早めに対策をとれば、進行を抑えることができます。
わずかな記憶障害が出た時点から、適切な治療とケアが効果的です。
アルツハイマー病に使う薬は4種類、レヴィー小体型認知症に使う薬が1種類認可されています。
アルツハイマー病やレヴィー小体型認知症の患者さんの脳では、アセチルコリンという神経伝達物質が減少しています。
神経伝達物質とは神経と神経の情報のバトンタッチに必要な物質で、減少すると脳のネットワークがうまく働かなくなってしまいます。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はアセチルコリンが分解されないように働き、脳の中でアセチルコリンが減るのを防ぎます。
現在認可されているのは、アリセプト®、レミニール®、イクセロンパッチ®とリバスタッチ®(イクセロンパッチ®とリバスタッチ®は会社が違うだけで同じ薬です)の3種類です。
薬の効果は大きく変わりませんが、ある薬剤が合わなかったり、効果が乏しい場合に他の薬剤に変更するとうまくいくことがあります。
これらは脳を元気にしてくれる薬ですが、空回りしてしまうとイライラや攻撃性、焦燥感などが出ることがあり、その場合は減量もしくは中止したりします。
メマリー®や漢方の抑肝散を併用することで薬を続けられることもあります。
また脈が過度に遅くなることがあるので、もともと脈が遅い方や心臓の病気がある方には注意が必要です。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は3種類ありますが、2種類を一緒に飲むことはできません。
たとえばアリセプトとレミニールの併用はできないことになっています。
平成11年に発売され、認知症の薬としては最も古くから使われています。
3mgと5mg、10mgの製剤がありますが、3mgは“慣らし”のための錠剤で、通常は5mg、重症の場合は10mgに増量します。
副作用が強くでる場合は3mgのままで処方する場合もあります。
水がなくても口の中で溶ける口腔内崩壊錠、細粒やドライシロップ剤、ゼリー剤などもあり、ご本人が服薬を嫌がる場合でもうまく飲んでもらえる場合があります。
服用は1日1回で、基本的に朝でも夜でもかまいません。
アルツハイマー病の治療や薬として使われてきましたが、平成26年からはレヴィー小体型認知症の治療薬としても認可されています。
現在レヴィー小体型認知症の薬として認められているのはアリセプト®のみです。
レミニール®
平成23年に発売され、アルツハイマー病の治療薬として使用されています。
普通の錠剤のほか、口腔内崩壊錠、内用液があります。
錠剤と口腔内崩壊錠は4mg、8mg、12mgがあり、内用液は1mL (4mg)、2mL (8mg)、3mL (12mg)があります。
朝と夜に1日2回飲む薬で、4mgを2回飲む量からはじめ、最大で12mgを1日2回(1日量 24mg)まで増量できます。
イクセロンパッチ®・リバスタッチ®
この2つは会社が違うだけで同じ薬です。
レミニール®と同じく、平成23年から販売されています。
適応はアルツハイマー病です。他の薬剤と違って、貼付剤(貼り薬)であることが特徴です。
薬を飲むことを嫌がる方でも、貼り薬だとうまくいく場合があります。
またアリセプト®やレミニール®が吐き気のために飲めない場合でもイクセロンパッチ®、リバスタッチ®を使うと継続できることがあります。
4.5mg、9mg、13.5mg、18mgのものがあり、徐々に増量していきます。
貼り薬のため、かぶれる人がありますが、貼る場所を変更したり、ステロイドのローションを少量塗っておくことで貼付を続けられる場合があります。
NMDA受容体拮抗薬
メマリー®
レミニール®などと同じく、平成23年から使われているアルツハイマー病の薬です。
現在のところメマリー®という薬のみがこのNMDA受容体拮抗薬として発売されています。NMDA受容体というのは、グルタミン酸という神経伝達物質の受け皿ですが、アルツハイマー病では脳の中でグルタミン酸の働きが乱れ、神経細胞が障害されたり神経の情報が障害されたりします。
メマリー®はグルタミンの働きを抑えることにより、神経伝達を整えたり、神経細胞を保護する可能性があります。
メマリーのよいところは、患者さんのイライラした感情を抑え、気持ちをおだやかにしてくれる働きがあることです。
患者さんの感情が安定すると、介護する方にも余裕が生まれ、意思疎通が良好となり、認知機能の改善も期待されます。
ただおだやかになりすぎても、逆に活気がなくなったりすることもあり、その場合は減量や中止が必要になります。
また腎臓が悪い方は薬が身体から抜けにくいため、はじめから減量して使用します。
最近、米バイオジェンとエーザイが共同開発したアルツハイマーの新薬が20年ぶりに米食品医薬品局(FDA)によって条件付きで迅速承認されました。
この「アデュカヌマブ」という薬は、脳の中に蓄積したアミロイドβやタウタンパクを取り除く(掃除してくれる)ことで認知機能の低下(悪化)を抑えることができると期待されています。
が、神経細胞のダメージを回復させることはできません。
ですから、これらが蓄積する前に取り除くために開発された薬です。
有効性が不確実だと2019年に1度臨床試験が中止された経緯を持つ薬ですので、まだまだ日本での承認は時間がかかりそうです。
では今日も1日前向きに!!
84 エナジーム(4)
人間は地球の1つの生物
Blog74・75の【がんとの付き合い方】でお話したように、どんなに遺伝子研究が進んでも、がんのことがわかるどころか、ますますわからなくなってきているということです。
やはりがん研究も生物学に戻って考えなおさなければいけないのではないか?
がんを治すのではなく、がんと共存していく道を探すべきである・・・。
人間は文明を発達させる代わりに、自然を軽視し、人間が生物の1つなんだということを忘れてしまったのではないでしょうか?
私たちは野に咲く花や小さな虫と同じ生物なんです。
唯一違うのは、考えることができる脳を持っている、ということだけなのに、あたかも他の生物とは違う存在と思いこみ、自然を壊し、何でも思い通りにしようとしています。
野に咲く花や、動物たちを見てください。
みんな自然と共存しています。
自然に身をゆだねています。
長い年月をかけて生き残る(子孫を絶やさない)ために進化しているのです。
私たち人間も、本来は自然とともに生きるべき生物だと思うのです。
山に登ったり、海を見たり、森林の中を歩くと心が癒されませんか?
そして、私たち人間はこの自然界の中の小さな存在だということを思い知らされることでしょう。
誕生しては死んでいく、そんな繰り返しの中で進化して行っているのです。
進化はその生物が子孫を作り、種を存続するためにだけ変化していくのです。
これから人間はどのように進化して行くのでしょうか?
大都市ではどんどん都市化が進み、自然とはどんどんかけ離れた生活をしています。
晩婚化、出産の高齢化が進み、子どもの数が減り、温暖化が進んでいます。
どんなに寿命が延びても、このままでは人間の人口は減っていくでしょう。
人口の減少が悪いのか、良いのか?
人口減少は自然の流れなのでしょうか?
明治時代まではほぼ横ばいだった人口は明治を境に急激に右肩上がりに増えているため、
私たちは人口が減ると聞くと、大丈夫なの?と思いがちですが、人間が小さな自然界の生物として生きるチャンスかもしれません。
不老不死ではなく、生まれて、老いて、死んで行く生物であること、自然とともに生きることができるのではないでしょうか。
浄土真宗の教えの中に、「白骨の御門書」と言う、人間のはかなさを諭した文章があります。
人間のはかない人生をよくよく考えると、この世の中でおよそはかないものは、あっという間に迎える人生の最期である。
いまだかつて万年も生きたという話を聞かず、一生は早くすぎるものである。
現在でも百年を生きることは難しい。
自分が先になるか、人が先になるか。
今日とも明日とも知れない命で、遅れる人早く亡くなる人は、木の葉の露、雫の数よりも多い。
そうであるならば、朝元気であった者が、夕方には死んで骨になるかもしれない。
無常の風が吹いたら、たちまちのうちにまぶたは閉じ、呼吸も停止して、顔色がむなしく変って赤みを失う。
そうなれば家族・親戚が集まって歎き悲しむが、蘇生効果はない。
さてすべき事をしなければというわけで、遺体を野外に送り、夜中に火葬をして煙となれば、わずかに白骨のみが残るだけである。
これはあわれというよりもおろかなことである。
ではどうしたらよいかというと、人間のはかない命は老若の順とは限らないので、誰もが早い時期から死後の生の大事を心にかけ、阿弥陀仏に深くおすがりして、念仏すべきである。
恐れ多いことよ。恐れ多いことよ。
伊藤比呂美さんの現代語訳がとてもわかりやすいです。
読み解き「般若心経」
私が、乳がんステージⅣと知ったとき、最初に浮かんだことは、
【私、死ぬまで生きられるんだ!!】
でした。
死を宣告されて初めて、死ぬことより、生きることの意味を知ったのです。
死があるからこそ、人生を生き生きと生きられるのです。
老いがあるから青春が輝くのです。
体力があるうちに、いろいろな事に挑戦しましょう。
年を取るということは、意欲があっても身体がついて行かないことが多く、若いからこそできることがたくさんあります。
若いうちは、自分は年を取っても何でもできると思うでしょうが、間違いなく全員できなくなります。おじいさん、おばあさんの話をたくさん聞いてみてください。
「ああ、あの時こんなこと言っていたな~。」
と必ず思いだすものです。
若いうちに思いきった冒険をしましょう。
一生の宝物になりますよ!!
では、今日も1日前向きに!!
83 薬剤師あるある(16)
副鼻腔炎
副鼻腔炎とは、副鼻腔に炎症が起こることを言います。
鼻づまり・鼻汁・頭痛・頭重感・臭覚障害などの症状があらわれ、蓄膿症とも呼ばれます。
副鼻腔炎は一般には命にかかわる疾患ではありませんが、集中力の低下などが起こり、日常生活に支障が起こることがあります。
副鼻腔炎を繰り返す人がたまにいますが、そういう方に、鼻水が出ますか?と聞くと、ほとんどの人が出ません!と答えるのです。
ですが、鼻水は前から出るとは限らず、のどのほうに落ちたり、副鼻腔に溜まったりします。
副鼻腔には、前頭洞【両側の眉毛の上】・篩骨洞【小さな空洞が蜂の巣状にあつまったもの】・上顎洞【最も大きい空洞】・蝶形骨洞があり、これらの空洞は、自然口と言う小さな穴で鼻腔とつながっています。
鼻腔の中には粘膜から線毛(繊毛)が生えています。
副鼻腔炎の原因
- 感染:ウィルス・細菌・真菌感染
風邪(経鼻感染)をひいた後に発症することが多いが、上顎の奥歯の虫歯や歯根の治療で、口腔内の細菌が上顎洞に侵入することがある。
- アレルギー:花粉症と合併していることもある。
- 急激な気圧の変化
副鼻腔炎には、急性と慢性があります。
急性副鼻腔炎:風邪やアレルギーによるものであれば、1か月以内に症状は消失し、治癒するもののことを言います。
慢性副鼻腔炎:炎症が持続したり、反復することによって3か月以上症状が続くものを言います。
原因には、
- ウィルスや最近の際感染を繰り返す
- 鼻腔内が狭い。鼻中隔湾曲症(鼻中隔がもともと、または後天的に曲がっている)
- アレルギー体質。好酸球性副鼻腔炎(非アトピー型喘息を合併していることが多い)
- 大気汚染
- 栄養のアンバランスが考えられます。
感染性副鼻腔炎:ウィルスや細菌感染が原因で、小児に多いが、近年減少してきている。
好酸球性副鼻腔炎:原因は不明だが、特殊なアレルギーで、成人に多く、近年増加してきている。これは治りにくく、再発しやすく、鼻茸ができやすく、その数も多い。
急性副鼻腔炎
・鼻漏:鼻汁(鼻水)が鼻から外に流れることを言い、鼻汁は膿が混じって粘り気があり、色は黄色や緑色をしています。
・後鼻漏:鼻汁が鼻からのどへ流れることを言い、健康な人の場合でも気づかないうちに鼻汁はのどに流れますが、急性副鼻腔炎の場合は濃度の高い鼻汁なので、のどに引っかかるような感じがし、咳や痰が出ます。
・鼻閉:鼻詰まりのことを言い、嗅覚障害が起こることもあります。
症状は
顔面痛:副鼻腔の自然口が閉塞し、内圧が高まることで起こりますが、炎症部位によって痛みの現れ方は異なります。
そのほかに発熱・鼻出血があり、風邪が原因のことが多いので、全身倦怠感・頭痛があります。
炎症部位で一番の部位が、上顎洞炎で、頬の痛み・頬が腫れて赤くなります。
2番が篩骨洞炎で、目の奥が痛くなります。
3番が前頭洞炎で、額のあたりが痛くなります。
めったに起こらない蝶形骨洞炎では、後頭部痛や頭頂部痛があります。
また、これらの痛みはうつむくと増強するのが特徴です。
慢性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎と同じように鼻漏・後鼻漏・鼻閉・嗅覚症状・頭痛・頭重感が現れますが、
鼻茸(腫れた粘膜がきのこのように飛び出す)ができるのが特徴で、これができると空気の通りがさらに悪くなり、鼻閉が悪化します。
感染性副鼻腔炎
- 鼻茸が多い
- 鼻汁がにかわ状の粘液性が強い
- 鼻閉がひどく、嗅覚障害を伴います
このように慢性副鼻腔炎は治療に時間がかかり、不快感も長期間続くので、なるべく早いうちに治療することをお勧めします。
鼻茸はぜんそくの原因にもなることがあり、治療は感染性か好酸球性かによって使う薬剤も異なりますので、一刻も早く耳鼻科に行きましょう。
では明日も1日前向きに!!
82 エナジーム(3)
見た目が若い人
年齢を重ねてくると、人を見る目も養われてくるのか、初めてお会いする方でもお話していると、そのお人柄や、その方の健康状態がわかってくるようになりますが、みなさんは、どうでしょうか?
色々な経験を経ても、人に騙される人はいますから、人を見る目もそう簡単には養えないのかもしれません。
年齢を聞いて、びっくりする方は多いですが、年齢より若く見える方は、心身ともに健康な方が多いと思います。
心を病んだり、身体に自信のない方はどうしても顔が暗くなる傾向があります。
また、いくら笑顔でも、しわが多く、肌の状態の悪い方は年齢より若くは見えませんね。
双子の研究では、遺伝的要素が同じなのに環境が違うことで、顔や体つきが変わることが証明されています。
健康状態は、遺伝よりも環境要因が大きいということです。
見た目が若い人は、腸がとても丈夫で、長生きする確率が高いことがわかっています。
染色体のテロメア(染色体の両端にあり、遺伝には関係しない)が長いこともわかっていますが、テロメアの長さも寿命も生まれつき決まっているものではないのです。
テロメアを伸ばすには、生活習慣(特に運動)がカギになることがわかってきています。
見た目の違い(老けて見える因子)には、喫煙、空気汚染、紫外線、肥満、うつ傾向といった要因が関与すると言われています。
生活習慣の中でも、食事、運動、メンタル(脳機能、睡眠など)、住環境の4つの要素が特に見た目と寿命に深くかかわっているそうです。
みなさんは、長生きしなくても、健康寿命を延ばしたいと思っているのではないでしょうか。
薬局にも、何が不満なのか怒ったような顔をして来局する方がいます。
とても人を寄せ付けない、こちらから声をかけるのも怖い方がいます。
その時の気分で顔は変化するものですが、そういう方はいつも怖い顔で来局します。
それに対して、いつもニコニコ、笑顔で来局する方がいます。
統計を取ったわけではないので、はっきりとは言えませんが、怖い顔の方は会話も弾みませんし、孤立した感じがします。
何か病気を探しているような気さえします。
それに対してニコニコ笑顔の方は、持病があるにしても、こちらから声をかけたくなるような、会話の弾む方です。
顔を太陽に向けていれば、決して影を見ることはない。(ヘレン・ケラー)
顔から光を放たぬものは、決して星を見ることはない。(ウィリアム・ブレイク)
20歳の顔は自然の贈り物。50歳の顔はあなたの功績。(ココ・シャネル)
何か特別なことをしているわけじゃないの。トレーナーとかそういうのも使わないし。本当に健康的な食事、食べるバランス、何がよいかを知ること、そして、やりすぎたなって思ったら軌道修正すればいいの。(エミリー・ラタコウスキー)
では今日も1日前向きに!!
81 FODMAP(2)
4つの敵
前回のお話の続きです。
ではこの4つの敵【オリゴ糖・ラクトース(2糖類)・フルクトース(単糖類)・ポリオール】はどんな食べ物に存在し、どんな食べ物に含まれないのでしょうか?
ヨーグルトや牛乳には乳糖が含まれています。
一般的にはお腹に良いと言われていますが、過敏性大腸症候群の人は一度に食べる量を減らす必要があります。
食べすぎには要注意なのです。
オリゴ糖は腸の健康に良い影響を与えるとして「トクホ」に認定されていますが、お腹の調子が悪い人にとっては、「トクホ」が逆効果になることがあるのです。
納豆やキムチなどの発酵食品は大腸内で発酵を促進するため、控えた方がいいです。
ただし、味噌や醤油は精製の過程で低FODMAP食になります。
フルクタン・ガラクタンなどのオリゴ糖類を含む、小麦・タマネギ・レンズ豆・ひよこ豆を控えること。
特にタマネギは過敏性大腸炎症候群の症状の引き金となるので、特に控えた方がいいです。
豆類はおなかの調子の悪い人には勧められません。
豆腐(木綿)は精製の過程で低FODMAP食になるので問題ありませんが、
甘味料として使われるソルビトール・キシリトールなどのポリオール類が使われている食品は避けましょう。
キシリトールガムでお腹が緩くなるのは、キシリトールが小腸での吸収が悪いからです。
果糖をたくさん含んだハチミツ・りんご・ももなどの摂取量も減らしましょう。
❶オリゴ糖
・フルクタン:果糖(フルクトース)がたくさん結合した重合体。
小麦食品(パン・ラーメン・パスタ・シリアルなど)・タマネギ
ヨーグルトや牛乳にはフルクタン源としてフルクトオリゴ糖が含まれているので、避けるべきです。
食事中のフルクタンはほとんど小麦由来のものです。
人間はフルクタンを消化できません!!
フルクタンは過敏性大腸症候群を引き起こすFODMAPの中でも最も原因になることが多いものです。
避けた方がよい高フルクタンの食品
果物(柿・すいか・白桃・ネクタリン)
野菜(ニンニク・タマネギ)
穀物(パン・シリアル・ラーメンなどの麺類・クラッカー(ライスクラッカーはOK)・クスクス)
豆類(ひよこ豆・レンズ豆)
ナッツ(ピスタチオ・カシューナッツ)
他(小麦ブラン・イヌリン(加工食品)・フルクトオリゴ糖)
・ガラクトオリゴ糖:ガラクトース分子がたくさん結合した重合体。
納豆は発酵食品で、大腸の中で発酵を進めてしまうので、避けるべきです。
キムチも同様ですが、キムチに使われているニンニクはオリゴ糖(フルクタン)を含んでいるので、避けるべきです。
味噌は同じ発酵食品ですが、精製の過程で低FODMAP食になります。
豆腐は豆から作られていますが、味噌と同じように精製の過程で低FODMAP食になります。
豆乳(大豆由来)は高FODMAP食ですが、大豆抽出物(Soy Protein)から作られた豆乳は飲んでも大丈夫です。
❷二糖類(ラクトース)
二糖類の代表が乳糖です。
腸を整えると考えられているヨーグルト・牛乳など乳製品です。
牛乳の中の乳糖は抗肥満作用がある!内臓脂肪を減らす!ことが証明されています。
解明はされていませんが、お腹の良い人にとってはとてもありがたい食べ物です。
ところが、お腹の調子の悪い人にとっては下痢・ガスのもと、腹痛の原因になるのです。
日本人の7割が乳糖を分解する酵素がうまく働いていないことがわかっています。
・乳糖(ガラクトース)は牛乳・ヨーグルトに含まれています。
食品に含まれ、お腹の調子を崩す可能性のあるFODMAPに含まれる二糖類は、乳糖(ラクトース)のみです。
これは、すべての動物、牛や羊、ヤギの乳にも含まれています。
ラクトースはグルコース(ブドウ糖)とガラクトースという消化可能な糖二つで構成されていて、小腸でラクターゼという酵素により分解されます。
乳糖不耐症の人はこのラクターゼのレベルが低いため、食べた乳糖の内の少ししか分解できません。
こういう人は乳糖を一度に取る量を控えるといいでしょう。
ただし、乳糖の摂取を減らすだけではお腹の症状を楽にすることはできず、他のFODMAPを控えることが大事です。
乳糖は、ヨーグルト・アイスクリーム・プリン・柔らかいチーズ類(カッテージ・クリーム・リコッタ)に含まれます。
硬い、熟成したチーズ(カマンベール・ブルー・モッツァレラ・パルメザン・チェダー)とバターは乳糖を含みません。
マーガリンやバターを塗ったり、少量のミルクチョコレートやケーキは問題ないことが多いのですが、ミルクをたくさん飲むと症状が起こる可能性があります。
❸単糖類
・フルクトース:果糖。果実・ハチミツなどに含まれる。
すべての果物・ハチミツ・高フルクトースのシロップに含まれます。(ジュースにはコーンシロップが添加されていることが多い)
また、ふつうの砂糖・スクロース・ショ糖などのテーブルシュガーの成分の1つであり、野菜の一部や穀物にも含まれています。
フルクトースはグルコースと一緒の時はうまく吸収されますが、フルクトースがグルコース濃度よりも高くなると吸収が遅くなる性質があります。
ですからフルクトースは食べないようにする必要はなく、グルコースよりも少なめに食べれば大丈夫です。
避けた方がいい高フルクトースの食品
果物(りんご・なし・サクランボ・いちじく・マンゴ・洋ナシ・スイカ)
野菜(アスパラガス・アーティチョーク)
甘味料と調味料(高フルクトースのコーンシロップ・ハチミツ・果糖ブドウ糖液糖・高果糖液糖)
❹ポリオール(糖アルコール)
マッシュルームやカリフラワーなどの野菜・様々な種類の果物に含まれます。
虫歯菌のエサになりづらい甘味料としてガムの中などに転嫁されていますが、お腹の調子の悪い人にとっては、下痢、腹痛の原因になります。
これらのポリオール類は、分子量の大きさや、水酸化物としての性格から、粘膜上皮バリアをうまく通過できません。
そのため小腸での吸収が悪く、浸透圧効果によって、水分を小腸に引き込み大腸内で発酵を促進させます。
食品メーカーで保湿剤として食品に用いられたり、人工甘味料として使われます。例えば、シュガーフリーをうたったガムやミント菓子・キャンディーなどです。
パッケージを良く見ると、「食べすぎるとお腹が緩くなることがあります」と書かれています。
避けた方がいい高ポリオールの食品
果物(りんご・アプリコット・なし・もも・西洋梨・ブラックベリー・ネクタリン・プルーン・すいか)
野菜(カリフラワー・きのこ類・さやえんどう)
添加物(ソルビトール・マンニトール・キシリトール・イソマルト・マルチトール・ポリデキストロース)
最近注目されているグルテンフリー食も過敏性大腸炎症候群に効果が期待されていますが
今のところ科学的には確認されていません。
それよりも低FODMAP食の方が科学的にも有効性が高いことが証明されています。
グルテンフリー食と低FODOMAP食との違いは、制限しているもの自体が違うというこ
です。
グルテンフリー食は小麦のグルテン(タンパク質)を完全に避けたものですが、お腹
の調子が良くなったという理由は、食事からグルテンを抜いたことではなく、FODNAP食
の中の1つであるフルクタンを除去した結果です。
過敏性大腸炎症候群に悪さをしているのはグルテンではなく、フルクタンが犯人です。
混同しないようにしましょう。
この「4つの敵」を避けることによって、お腹の調子は徐々に良い方向に向かうことを確信
しています。
お腹の調子の良い人は従来のお腹に良い食事をそのまま続け、お腹の調子の悪い人は、この
低FODMAP食を実行してみましょう。
では今日も1日前向きに!!
80 FODMAP(1)
お腹の弱い人
お腹の不調で悩んでいる人は、アジアの中でも日本がダントツに多く、10人に1人(日本人の14%)もいます。
過敏性腸症候群と言われる病気です。
お腹の不調で悩んでいる人は、少しでもよい方向に向かうよう努力しています。
「たくさんのお医者さんからのアドバイス」
「食事を工夫」
「ストレス解消」
しかし、それで改善したでしょうか?
たくさんの「腸の健康法」が出ているにもかかわらず、これだけ改善しないのはなぜでしょうか?
薬局にも、特に男性に多いのですが、慢性の下痢に悩んでいる方が多く来局します。
「なるべく食物繊維を取り、脂っこい物を避けてください」
「自分が食べて下痢になる食物を摂るのをやめましょう」・・・例えば牛乳
などと説明しますが、一向に効果がないことは私も実感しています。
それはその腸を整える健康法が間違っているからだったのです。
お腹の不調で悩んでいる人はうすうすわかっています。
腸の不調と食事に関係があるのではないか?と。
実はおなかの調子がすぐれない人にとって、腸には『4つの敵』がいます!と言っているのは、消化器内科医の江田証氏です。
著書「パン・豆類・ヨーグルト・りんごを食べてはいけません」
この本を読んで、目からうろこ!でしたので、ご紹介します。
4つの敵をお話する前にいっておきたいことがあります。
この4つの敵には二面性があります。
お腹の調子のよい人には「いい顔」をして役に立つくせに、お腹の調子の悪い人には「弱いものいじめ」をするようにふるまいます。
そればかりでなく、これらの「敵」を食べると人によっては、だるさや疲労感をもたらします。
原因のわからない「だるさ」はこのせいかもしれません。
お腹の調子の悪い人はこの「4つの敵」との距離を取り、疎遠になることが大切なのです。
この「真に腸を整える食事法」はオーストラリアから始まり、アメリカの一流大学からこの食事法の有効性を示す論文が多数出されて、ローマ財団(世界18か国の医学専門家が持論を行っている世界的権威)は、2013年にこの食事法が最も安全かつ有効性の高い治療法として推奨しており、お腹の調子の悪い人以外にも、腸閉塞(イレウス)・大腸憩室・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)・セリアック病(完全グルテンフリー食も併用)にも応用されています。
「4つの敵」についてはあとでお話することにして、まず私たちの身体は、食べるとどういう道筋を通るのかは皆さん知っていますよね。
口→食道→胃・十二指腸→小腸→大腸の順番です。
胃・十二指腸を通って、小腸で栄養分が吸収されるわけですが、小腸の中には、2つの糖質があります。
- ふつうの糖質:非常に吸収がよいため、腸の粘膜に存在するポンプからどんどん吸収されていきます。そして腸の中から消えていきます。
- 問題を起こす糖質:非常に吸収が悪い。
この糖質をFODMAP(フォドマップ)と呼びます。
この糖質こそが、「4つの敵」なのです。
FODMAPとは?
吸収の悪い糖質のことです。
F(Fermentable):発酵性の糖質
O(Oligosaccharides):オリゴ糖
D(Disaccharides):二糖類
M(Monosaccharide):単糖類
A(And)
P(Polyols):ポリオール
このFODMAP(4つの敵:ODMP)を含んだ食べ物を食べすぎると、小腸の中でこの糖質の濃度が濃くなっていきます。
人間の体の性質に、「濃いものを薄めようとする」性質があります。
小腸の中にあまりにも濃いものが入ると、人間はそれを薄めようとして、血管の中から、小腸に大量の水分を引き込み、「水浸し」の状態になるのです。
水でいっぱいになった小腸は、水によって腸が刺激され、運動が過剰になります。
結果として、お腹がゴロゴロしたり、痛みが出ます。
水が増えるので下痢をします。
過剰な液体に対処するため、腸は早く腸の内容物を押し出す速度を速めるために下痢を起こすのです。
水が大量にたまるので、お腹はパンパンに張ってしまいます。
FODMAPを含んだ食品は小腸に負担をかけます。
現代人の食事では、特に小腸で吸収しにくい食品が非常に多いのです。
小腸に負担をかけないことが、お腹の不調を改善することになるのです。
では小腸で吸収されない糖質(FODMAP)はどうなるのでしょうか?
そのまま大腸にまで達してしまいます。
正常な人の大腸の中の便にはほとんど栄養分が残っていないのが普通です。
なぜなら、小腸でほとんどの栄養分が吸収されてしまうからです。
便は大腸に達する頃には「しぼりかす」の状態になっているはずです。
大腸には大腸の腸内細菌が待ち構えています。
FODMAPは腸内細菌のファーストフードとなり、腸内細菌のエサになります。
腸内細菌とFODMAPは大腸内で異常な発酵を起こし、過剰なガス(水素が多く、二酸化炭素・メタンガス)によってパンパンに張り、周りにある神経が過敏に感じ取り、神経を通じて脳に伝わり、疲れ・不安・お腹の様々な不快な症状を生むというわけです。
ですから、お腹の調子の悪い人がやるべきことは、様々な糖質の中で、FODMAPを含んだ食事をできるだけ避けた食事、すなわち低FODMAP食を取り入れることなのです。
低FODMAP食がどうしてよいのかがわかったと思いますが、
- 低FODMAP食は科学的にその効果が証明されていること。
- 必要な栄養はすべて摂れること。
- 低FODMAP食を実践することによって、長期にわたってお腹のつらい症状が出ないようになること。
以上が証明されて実践されているので、お腹の調子の悪い方は、是非実践してみてください。
下記の一覧表で、何か決まったものを食べたときにお腹の調子の悪くなる人はよく調べてください。
次回はもう少し具体的にお話したいと思っています。
では今日も1日前向きに!!