81 FODMAP(2)
4つの敵
前回のお話の続きです。
ではこの4つの敵【オリゴ糖・ラクトース(2糖類)・フルクトース(単糖類)・ポリオール】はどんな食べ物に存在し、どんな食べ物に含まれないのでしょうか?
ヨーグルトや牛乳には乳糖が含まれています。
一般的にはお腹に良いと言われていますが、過敏性大腸症候群の人は一度に食べる量を減らす必要があります。
食べすぎには要注意なのです。
オリゴ糖は腸の健康に良い影響を与えるとして「トクホ」に認定されていますが、お腹の調子が悪い人にとっては、「トクホ」が逆効果になることがあるのです。
納豆やキムチなどの発酵食品は大腸内で発酵を促進するため、控えた方がいいです。
ただし、味噌や醤油は精製の過程で低FODMAP食になります。
フルクタン・ガラクタンなどのオリゴ糖類を含む、小麦・タマネギ・レンズ豆・ひよこ豆を控えること。
特にタマネギは過敏性大腸炎症候群の症状の引き金となるので、特に控えた方がいいです。
豆類はおなかの調子の悪い人には勧められません。
豆腐(木綿)は精製の過程で低FODMAP食になるので問題ありませんが、
甘味料として使われるソルビトール・キシリトールなどのポリオール類が使われている食品は避けましょう。
キシリトールガムでお腹が緩くなるのは、キシリトールが小腸での吸収が悪いからです。
果糖をたくさん含んだハチミツ・りんご・ももなどの摂取量も減らしましょう。
❶オリゴ糖
・フルクタン:果糖(フルクトース)がたくさん結合した重合体。
小麦食品(パン・ラーメン・パスタ・シリアルなど)・タマネギ
ヨーグルトや牛乳にはフルクタン源としてフルクトオリゴ糖が含まれているので、避けるべきです。
食事中のフルクタンはほとんど小麦由来のものです。
人間はフルクタンを消化できません!!
フルクタンは過敏性大腸症候群を引き起こすFODMAPの中でも最も原因になることが多いものです。
避けた方がよい高フルクタンの食品
果物(柿・すいか・白桃・ネクタリン)
野菜(ニンニク・タマネギ)
穀物(パン・シリアル・ラーメンなどの麺類・クラッカー(ライスクラッカーはOK)・クスクス)
豆類(ひよこ豆・レンズ豆)
ナッツ(ピスタチオ・カシューナッツ)
他(小麦ブラン・イヌリン(加工食品)・フルクトオリゴ糖)
・ガラクトオリゴ糖:ガラクトース分子がたくさん結合した重合体。
納豆は発酵食品で、大腸の中で発酵を進めてしまうので、避けるべきです。
キムチも同様ですが、キムチに使われているニンニクはオリゴ糖(フルクタン)を含んでいるので、避けるべきです。
味噌は同じ発酵食品ですが、精製の過程で低FODMAP食になります。
豆腐は豆から作られていますが、味噌と同じように精製の過程で低FODMAP食になります。
豆乳(大豆由来)は高FODMAP食ですが、大豆抽出物(Soy Protein)から作られた豆乳は飲んでも大丈夫です。
❷二糖類(ラクトース)
二糖類の代表が乳糖です。
腸を整えると考えられているヨーグルト・牛乳など乳製品です。
牛乳の中の乳糖は抗肥満作用がある!内臓脂肪を減らす!ことが証明されています。
解明はされていませんが、お腹の良い人にとってはとてもありがたい食べ物です。
ところが、お腹の調子の悪い人にとっては下痢・ガスのもと、腹痛の原因になるのです。
日本人の7割が乳糖を分解する酵素がうまく働いていないことがわかっています。
・乳糖(ガラクトース)は牛乳・ヨーグルトに含まれています。
食品に含まれ、お腹の調子を崩す可能性のあるFODMAPに含まれる二糖類は、乳糖(ラクトース)のみです。
これは、すべての動物、牛や羊、ヤギの乳にも含まれています。
ラクトースはグルコース(ブドウ糖)とガラクトースという消化可能な糖二つで構成されていて、小腸でラクターゼという酵素により分解されます。
乳糖不耐症の人はこのラクターゼのレベルが低いため、食べた乳糖の内の少ししか分解できません。
こういう人は乳糖を一度に取る量を控えるといいでしょう。
ただし、乳糖の摂取を減らすだけではお腹の症状を楽にすることはできず、他のFODMAPを控えることが大事です。
乳糖は、ヨーグルト・アイスクリーム・プリン・柔らかいチーズ類(カッテージ・クリーム・リコッタ)に含まれます。
硬い、熟成したチーズ(カマンベール・ブルー・モッツァレラ・パルメザン・チェダー)とバターは乳糖を含みません。
マーガリンやバターを塗ったり、少量のミルクチョコレートやケーキは問題ないことが多いのですが、ミルクをたくさん飲むと症状が起こる可能性があります。
❸単糖類
・フルクトース:果糖。果実・ハチミツなどに含まれる。
すべての果物・ハチミツ・高フルクトースのシロップに含まれます。(ジュースにはコーンシロップが添加されていることが多い)
また、ふつうの砂糖・スクロース・ショ糖などのテーブルシュガーの成分の1つであり、野菜の一部や穀物にも含まれています。
フルクトースはグルコースと一緒の時はうまく吸収されますが、フルクトースがグルコース濃度よりも高くなると吸収が遅くなる性質があります。
ですからフルクトースは食べないようにする必要はなく、グルコースよりも少なめに食べれば大丈夫です。
避けた方がいい高フルクトースの食品
果物(りんご・なし・サクランボ・いちじく・マンゴ・洋ナシ・スイカ)
野菜(アスパラガス・アーティチョーク)
甘味料と調味料(高フルクトースのコーンシロップ・ハチミツ・果糖ブドウ糖液糖・高果糖液糖)
❹ポリオール(糖アルコール)
マッシュルームやカリフラワーなどの野菜・様々な種類の果物に含まれます。
虫歯菌のエサになりづらい甘味料としてガムの中などに転嫁されていますが、お腹の調子の悪い人にとっては、下痢、腹痛の原因になります。
これらのポリオール類は、分子量の大きさや、水酸化物としての性格から、粘膜上皮バリアをうまく通過できません。
そのため小腸での吸収が悪く、浸透圧効果によって、水分を小腸に引き込み大腸内で発酵を促進させます。
食品メーカーで保湿剤として食品に用いられたり、人工甘味料として使われます。例えば、シュガーフリーをうたったガムやミント菓子・キャンディーなどです。
パッケージを良く見ると、「食べすぎるとお腹が緩くなることがあります」と書かれています。
避けた方がいい高ポリオールの食品
果物(りんご・アプリコット・なし・もも・西洋梨・ブラックベリー・ネクタリン・プルーン・すいか)
野菜(カリフラワー・きのこ類・さやえんどう)
添加物(ソルビトール・マンニトール・キシリトール・イソマルト・マルチトール・ポリデキストロース)
最近注目されているグルテンフリー食も過敏性大腸炎症候群に効果が期待されていますが
今のところ科学的には確認されていません。
それよりも低FODMAP食の方が科学的にも有効性が高いことが証明されています。
グルテンフリー食と低FODOMAP食との違いは、制限しているもの自体が違うというこ
です。
グルテンフリー食は小麦のグルテン(タンパク質)を完全に避けたものですが、お腹
の調子が良くなったという理由は、食事からグルテンを抜いたことではなく、FODNAP食
の中の1つであるフルクタンを除去した結果です。
過敏性大腸炎症候群に悪さをしているのはグルテンではなく、フルクタンが犯人です。
混同しないようにしましょう。
この「4つの敵」を避けることによって、お腹の調子は徐々に良い方向に向かうことを確信
しています。
お腹の調子の良い人は従来のお腹に良い食事をそのまま続け、お腹の調子の悪い人は、この
低FODMAP食を実行してみましょう。
では今日も1日前向きに!!
80 FODMAP(1)
お腹の弱い人
お腹の不調で悩んでいる人は、アジアの中でも日本がダントツに多く、10人に1人(日本人の14%)もいます。
過敏性腸症候群と言われる病気です。
お腹の不調で悩んでいる人は、少しでもよい方向に向かうよう努力しています。
「たくさんのお医者さんからのアドバイス」
「食事を工夫」
「ストレス解消」
しかし、それで改善したでしょうか?
たくさんの「腸の健康法」が出ているにもかかわらず、これだけ改善しないのはなぜでしょうか?
薬局にも、特に男性に多いのですが、慢性の下痢に悩んでいる方が多く来局します。
「なるべく食物繊維を取り、脂っこい物を避けてください」
「自分が食べて下痢になる食物を摂るのをやめましょう」・・・例えば牛乳
などと説明しますが、一向に効果がないことは私も実感しています。
それはその腸を整える健康法が間違っているからだったのです。
お腹の不調で悩んでいる人はうすうすわかっています。
腸の不調と食事に関係があるのではないか?と。
実はおなかの調子がすぐれない人にとって、腸には『4つの敵』がいます!と言っているのは、消化器内科医の江田証氏です。
著書「パン・豆類・ヨーグルト・りんごを食べてはいけません」
この本を読んで、目からうろこ!でしたので、ご紹介します。
4つの敵をお話する前にいっておきたいことがあります。
この4つの敵には二面性があります。
お腹の調子のよい人には「いい顔」をして役に立つくせに、お腹の調子の悪い人には「弱いものいじめ」をするようにふるまいます。
そればかりでなく、これらの「敵」を食べると人によっては、だるさや疲労感をもたらします。
原因のわからない「だるさ」はこのせいかもしれません。
お腹の調子の悪い人はこの「4つの敵」との距離を取り、疎遠になることが大切なのです。
この「真に腸を整える食事法」はオーストラリアから始まり、アメリカの一流大学からこの食事法の有効性を示す論文が多数出されて、ローマ財団(世界18か国の医学専門家が持論を行っている世界的権威)は、2013年にこの食事法が最も安全かつ有効性の高い治療法として推奨しており、お腹の調子の悪い人以外にも、腸閉塞(イレウス)・大腸憩室・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)・セリアック病(完全グルテンフリー食も併用)にも応用されています。
「4つの敵」についてはあとでお話することにして、まず私たちの身体は、食べるとどういう道筋を通るのかは皆さん知っていますよね。
口→食道→胃・十二指腸→小腸→大腸の順番です。
胃・十二指腸を通って、小腸で栄養分が吸収されるわけですが、小腸の中には、2つの糖質があります。
- ふつうの糖質:非常に吸収がよいため、腸の粘膜に存在するポンプからどんどん吸収されていきます。そして腸の中から消えていきます。
- 問題を起こす糖質:非常に吸収が悪い。
この糖質をFODMAP(フォドマップ)と呼びます。
この糖質こそが、「4つの敵」なのです。
FODMAPとは?
吸収の悪い糖質のことです。
F(Fermentable):発酵性の糖質
O(Oligosaccharides):オリゴ糖
D(Disaccharides):二糖類
M(Monosaccharide):単糖類
A(And)
P(Polyols):ポリオール
このFODMAP(4つの敵:ODMP)を含んだ食べ物を食べすぎると、小腸の中でこの糖質の濃度が濃くなっていきます。
人間の体の性質に、「濃いものを薄めようとする」性質があります。
小腸の中にあまりにも濃いものが入ると、人間はそれを薄めようとして、血管の中から、小腸に大量の水分を引き込み、「水浸し」の状態になるのです。
水でいっぱいになった小腸は、水によって腸が刺激され、運動が過剰になります。
結果として、お腹がゴロゴロしたり、痛みが出ます。
水が増えるので下痢をします。
過剰な液体に対処するため、腸は早く腸の内容物を押し出す速度を速めるために下痢を起こすのです。
水が大量にたまるので、お腹はパンパンに張ってしまいます。
FODMAPを含んだ食品は小腸に負担をかけます。
現代人の食事では、特に小腸で吸収しにくい食品が非常に多いのです。
小腸に負担をかけないことが、お腹の不調を改善することになるのです。
では小腸で吸収されない糖質(FODMAP)はどうなるのでしょうか?
そのまま大腸にまで達してしまいます。
正常な人の大腸の中の便にはほとんど栄養分が残っていないのが普通です。
なぜなら、小腸でほとんどの栄養分が吸収されてしまうからです。
便は大腸に達する頃には「しぼりかす」の状態になっているはずです。
大腸には大腸の腸内細菌が待ち構えています。
FODMAPは腸内細菌のファーストフードとなり、腸内細菌のエサになります。
腸内細菌とFODMAPは大腸内で異常な発酵を起こし、過剰なガス(水素が多く、二酸化炭素・メタンガス)によってパンパンに張り、周りにある神経が過敏に感じ取り、神経を通じて脳に伝わり、疲れ・不安・お腹の様々な不快な症状を生むというわけです。
ですから、お腹の調子の悪い人がやるべきことは、様々な糖質の中で、FODMAPを含んだ食事をできるだけ避けた食事、すなわち低FODMAP食を取り入れることなのです。
低FODMAP食がどうしてよいのかがわかったと思いますが、
- 低FODMAP食は科学的にその効果が証明されていること。
- 必要な栄養はすべて摂れること。
- 低FODMAP食を実践することによって、長期にわたってお腹のつらい症状が出ないようになること。
以上が証明されて実践されているので、お腹の調子の悪い方は、是非実践してみてください。
下記の一覧表で、何か決まったものを食べたときにお腹の調子の悪くなる人はよく調べてください。
次回はもう少し具体的にお話したいと思っています。
では今日も1日前向きに!!
79 エナジーム(2)
言葉のおもしろさ
先日、言語学者 川添愛 著「言語学バーリ・トゥード」を読みました。
そもそも言語学者とは?
一般の人は誤解しているというのである。
言語学者なんだから、正しい言葉の使い方を知っているだろう。
言語学者なんだから、バイリンガルどころか世界中の言語に長けているんだろう。
著者は言語学者の中でも研究対象が「日本語」で、日本語が専門です!と言っておけば多言語には堪能でないことはわかってもらえても、言葉のセンスがあり、キャッチコピーがうまいだろう(植物学者はみんなフラワーアレンジメントのセンスがあると言われるのと同じで、ナンセンス)、とか正しい日本語の使い方を研究していると思われがちだというのです。
言語学の研究対象は、正しい言語使用だけではなく、著者が取り組んできたのは、「理論言語学」中でも日本語の文法および意味理解の研究だそうで、日本語はこうでなければならない!と押し付けられる規範ではなく、私たちが普段言葉を使う際に頭の中で動かしている仕組みのことだというのです。
言葉を「自然現象」としてみるので、そこには「正しい」も「間違っている」もない、というのです。
このバーリ・トゥードとは、もともとはポルトガル語の「何でもあり」という意味ですが、ルールや反則を最小限にした総合格闘技のことだそうです。
言葉を「自然現象」と見るならば、了解を意味する「り」、パーリーピーポー(Party People)の略「パリピ」、タピオカドリンクを飲む「タピる」、「とりあえずまあ」の略語「とりま」のように言葉を短縮したり、「……って感じ」,「……とか」や「……じゃない?」のような語尾上げ、「……っす」「……っすか?」という新語を敬語として使うなどの若者言葉の誕生は、たいていシステマチックに起こっていて、言葉というシステムに対して貴重な示唆を与えてくれるそうです。
この本の中で、とても興味深かったことは、言葉の意味と意図は違う場合があるということです。
例えば、「熱湯コマーシャル」でおなじみの、ダチョウ倶楽部・上島竜兵氏の
「絶対に押すなよ!」は、「押せ!」という意図であることはみんなが承知していることですね。
ここでは、「絶対に押すなよ!」と言う言葉の「意味」とは裏腹に、その「意図」は「押せ!」
であるように、正反対になることもあるというのです。このような「意味」と「意図」のず
れは日常的にあることで、わたしたちをしばしば悩ませるものです。
有名な京都人の話で、客人に対して、「ぶぶ漬でもどうどす?」は「早くお帰りください。」を意図しているという話は、本当かどうかは別にしても、この「意味」と「意図」のずれを端的に表しているのではないでしょうか?
人間というのは、本当に素晴らしいと思うのです。
人間は、この「意味」と「意図」のずれをどんなシチュエーションでも理解できる脳を持っています。
私たちの脳内では、意図理解のための暗黙の処理が働いているのです。
例えば、これをAIでできるか?と言われれば、不可能ではないにしても、どれだけの膨大な情報を使用しなくてはならないでしょうか。
「絶対に押すなよ!」と竜兵氏が発したとき、AIが竜兵氏を熱湯風呂に押して落とすことはできても、それを竜兵氏ではなくほかの人がネタをパクッテしたとき、もしくは、熱湯風呂でなくクリームパイを目の前に置いた時、AIに適切に判断させるには、より複雑な知識と判断がAIに必要になるでしょう。
AIがどこまでできるのか?などの話題は著者の『自動人形の城』を読むと面白いかもしれません。
例えば、「おじいさんの時計」の歌詞の中に、「今はもう動かないおじいさんの時計」があるが、この歌詞を聞いて、大多数の人は「動かないのはおじい・・・いやいや、やっぱり時計の方だよね、うん」と良識的な解釈ができるのも、歌のテーマや雰囲気を考慮して、作者の意図を推測するからです。
AIにとっての問題は、「意図を特定するための手がかりが、言葉そのものの意味の中には入っていない」ということです。
つまり、AIにいくら言葉そのものの意味を教えてもそれだけでは意図をきちんと推測するためには不十分で、あいまいな文から相手の意図を推測するときは、常識だったり、その場面や相手の文化に関する知識だったり、それまでの文脈だったりするのです。
そういった広い意味での「取り決め」を話し手と聞き手の間で共有していなければ、意図の伝達は成り立たないということなのです。
著者の、このような深い言葉に対する考察を読むと、私たちはなんと贅沢な毎日を過ごしているのだろうと思います。
脳の一部が損傷したり、認知症になったりすると、このような脳の中で起こっている暗黙の処理がどれだけ緻密なことなのかが、わかります。
人間の脳がAIにとってかわることは不可能でしょうし、可能にする必要もないのではないでしょうか?
では今日も1日前向きに!!
78 エナジーム(1)
ポジティブシンキング
乳がんのステージⅣと診断されてから、あっという間に丸3年が経過しました。
なぜあっという間かと言うと、最初の2年間はひっきりなしに通院があり、治療もいろいろと変わり、考えている暇がなかったからです。
点滴治療(標的抗がん剤治療)を終了してから9か月、終了してよいのかどうか?迷いましたが、今はその決断は良かったと思っています。
74・75で書いたように、がんはまだまだわからない部分が大きいので、最小限の治療をし、後は自然に生活することを選択してよかったと思っています。
まだ抗女性ホルモン剤の服薬は続けていますが・・・これはがん細胞を直接刺激するのではないので、いいかな?と思っています。
「エナジーム」という言葉は私の考えた造語です。何か前向きになれる話をしたいと思って、この言葉を造りました。
「エナジー コラム(元気になるコラム)」という意味です。
私が驚いたこと、楽しいと思えること、目からうろこが落ちた話などを書くことによって、読んでいる方々が少しでも楽しい気持ちになったり、明日へのエネルギーとなってくれることを望んでいます。そんな大げさな話ではないですが・・・。
私はブログの最後に、いつも前向きに!!という言葉を書いています。
そしてブログのタイトルは「一寸先は闇がいい」です。
一寸先は闇がいい、なんて、あんたのへそ曲がってんじゃないの?
と自分に突っ込みを入れたくなるようなタイトルですが、いつも私は逆境でしか役に立たない人間だと思っているのです。逆境でない時は、無駄に力を使ってしまって余計なことを考えたり、行動するので、周りに迷惑をかけることが多いからです。
いわゆる、じっとしていられない多動性症候群です。
強風に立ち向かう姿、大好きです。
こうなると必死な感じが出るので、理想は「風に柳」になりたいですが・・・。
じゃなくて
になりたい!!!!
一寸先は闇がいい!と常に思っているのですが、このタイトルを付けるにあたり、山本夏彦さんの「一寸さきはヤミがいい」という本があることを知り、読みました。
山本夏彦(1915~2002)さんは、下町生まれのコラムニストで、「室内」を創刊した方として有名です。
コラムはどれもおしゃれで、ウイットに富んでいて、私はこの人の文章が大好きでした。
大好きな山本夏彦さんの本のタイトルと同じじゃない!!と私はうれしくなりました。
下町生まれ同士のへその曲がり方、同じです。
同じタイトルと言うのもおこがましいので、ひらがな・カタカナ部分を漢字にしたわけです。
一寸先は闇がいい!!は言葉通りに闇が好きなわけではないということです。一寸先はいつも闇だと思って生きていけ!人間はいつか死ぬんだから!という意味が込められています。
明日死ぬ!と思えば、今何をしなければならないか、何をしたいのかが浮き彫りになるはずです。
立ち止まってはいられない、行動あるのみです。
ポジティブシンキング、なんてできないと思っている方が多いと思いますが、特にポジティブにしなきゃ、なんて考えなくていいのです。
一寸先が闇であると思って行動すればいいのです。考えている暇なんかありませんから!!
私はがんのステージⅣのことは忘れるようにしています。と言うか忘れています。
それよりもやりたいことがたくさんあるし、死ぬ前にしておかなければならないこともたくさんあります。
若くても年を取っても、やりたいことはあるはずです。
まずは行動しましょう。
今後はこのシリーズで面白い話をしていきたいと思っています。
では、明日も1日前向きに!!
77 薬剤師あるある(15)
めまい・耳鳴り
めまいとは?
自分自身または周囲が動いていないにもかかわらず、動いているという違和感を覚える状態のことを言います。
目が回る、目がくらむと言った症状は、多くの人が経験したことがあるでしょう。
めまいにはどんな原因があるのでしょうか?
・乗り物酔い・ストレス・睡眠不足
・耳の病気
・不整脈や全身の病気
・原因不明
めまいを自覚する人の数は年々増加傾向にあります。
男性より女性の方が多く、男性が高齢になるほど増えるのに対して、女性はどの年齢でも増えています。
では、身体のバランスを保つ仕組みとは?
・目からの情報・・・平衡感覚(水平や垂直の方向や自分がどのように動いているか)
・耳(内耳)からの情報・・・平衡感覚(身体の回転や傾き)
耳の構造と働き
耳の働きとは、身体のバランスを感じ取る働き(平衡感覚)と音を感じる働き(聴覚)
内耳の三半規管と前庭の耳石で平衡感覚をつかさどっています。
三半規管の中のリンパ液が動くことにより、感覚細胞を動かして頭や身体の動きの向きや速さを感じ取ることができます。
耳石器は頭や身体の傾きや重力のかかり方を感じる取る器官で、耳石が動くことにより、感覚細胞に伝わり、脳に伝わるのです。
三半規管や耳石器の情報は前庭神経によって脳に伝わり、音の情報は蝸牛神経によって脳に伝わり、全身に指令が行き渡ります。
めまいの種類
- 回転性めまい・・・内耳の障害が原因であることが多い
自分の周囲がグルグル回っているように感じる(周囲や天井が一定の方向に流れるように回って見える)
- 浮動性めまい・・・脳の障害が原因であることが多い
雲の上を歩いているようにフワフワと不安定に感じる(体が宙に浮いているような感じ。目の前の景色が揺れて見える)
- 平衡失調
歩いている時につまづきやすくなる。まっすぐに歩けず、ふらつく。
倒れそうになる。
- 立ちくらみ(眼前暗黒感)
立ち上がる目の前が暗くなる。クラクラして、意識が遠のく。
症状の起こり方は様々で多くの場合は突然起きるが、特定の体位・動作をしたときだけ起こる場合もあります。
少し休むと治まったり、一度治まっても何度も繰り返したり、何日も症状が続いたり、悪化していく場合もあります。
めまいの起こる仕組み
- 内耳の障害
「メニエール病」
激しい回転性のめまいや耳鳴りなどが起こり、その後も発作を何度も繰り返します。
内リンパ腫と言って、水ぶくれのような状態になります。
原因はストレスが多い。
頭を特定の位置に変えたときにめまいが起こります。
原因は三半規管の中に耳石が入りこむためです。
「突発性難聴」
突然、片側の耳が聞こえにくくなる病気で、めまいを伴うこともある。
はっきりした原因は不明だが、ウィルス感染・内耳の血流障害と言われている。
「外リンパ瘻」
内耳の外リンパ液が中耳に漏れ出し、めまいや難聴が突然起こる病気。
原因はせきやくしゃみ・鼻を強くかむ・ダイビングや登山と考えられている。
そのほか、内耳炎・聴神経腫瘍・ラムゼイ・ハント症候群(耳性帯状疱疹)があります。
- 前庭神経の障害
「前庭神経炎」
前庭神経に炎症が起こり、起き上がれないほどの激しいめまいが現れます。
原因はウィルス感染によって起こると考えられています。
- 脳の障害
「脳血管障害」や「脳腫瘍」は命にかかわる病気なので、要注意!!
手足や口がしびれる・ろれつが回らない・物が二重に見える・意識が薄れる・激しい頭痛は脳の障害からくる神経症状なので、急いで脳神経外科や神経外科に行ってください。
椎骨動脈や脳底動脈の血流循環が悪くなり、一過性脳虚血発作(TIA)の一種でめまいや手足のしびれが現れる病気です。
- その他の病気
頸性めまい・・・首を動かしたときにめまいが起こる(変形性頸椎症・むち打ち症)
自律神経失調症・・・起立性低血圧・起立性調節障害(学童期~思春期の子どもに多い)
更年期障害・・・40歳代後半~50歳代前半の女性に多い
糖尿病・高血圧/低血圧・不整脈・脂質代謝異常/動脈硬化・貧血・肩こりなど
このように、様々な病気が原因となってめまいが起こります。
「首」がめまいと深い関係があると言われています。
また、薬の副作用にめまいもありますので、おかしいなと思ったときは医師や薬剤師に相談してください。
ストレス・不規則な生活リズム・疲労や睡眠不足・度数の合わない眼鏡やコンタクトが原因と言われています。
めまいの問題点は、日常生活に支障をきたすこと、転倒のきっかけとなることです。
早くめまいの原因を調べて、治療することが大切です。
では今日も1日前向きに!!
76 セルフメディケーション
セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機関(WHO)は定義しています。
日本では、国民の「健康寿命」延伸がテーマで、薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、一般用医薬品等の適正な使用に関する助言や健康に関する相談、情報提供を行うなど、薬局・薬剤師の活用を促進しています。
ですから、消費者は専門家の適切なアドバイスの下、自分の責任においてOTC医薬品などを選び、有効かつ安全に使用する必要があります。
なぜセルフメディケーションを推進しているのでしょうか?
それは日本の保険が破たんしているからです。
自分で治せる軽い病気は自分で治しましょう!というわけです。
そのためにセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)があります。
これは、医療費控除の特例として、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。
これは通常の医療費控除(病院等)との合算はできず、医療費控除を行っている場合、セルフメディケーション税制は申告できません。
どちらか片方のみ申告ができます。
もし、セルフメディケーション税制を使いたいのなら、今後、ドラッグストア等で医薬品を購入する際に、セルフメディケーション税制対象商品であるかの確認や、レシートの保存を行いましょう。
世帯での年間購入額が1万2000円以上の場合、セルフメディケーション税制の利用が可能です。
※レシートを紛失した場合、店によっては再発行が可能ですので、購入した店舗にご確認ください。
ところで、軽い病気かどうか?誰が判断するのでしょうか?
まずは自己判断せずに、薬局で薬剤師に相談しましょう。
きっと良いアドバイス(医療機関を受診したほうが良いかどうか?)をもらえると思います。
薬剤師は、「トリアージ」と言って、医療機関への受診が必要か?求めているOTC薬品でよいのか?他のOTC薬品や対処方法があるかどうか?と言うアドバイスをしてくれるはずです。
そのためにも、かかりつけ薬局を持っておいたほうがいいです。
かかりつけ薬局ではその方の薬の使用の歴史や、生活習慣などを配慮して、適切なカウンセリングを実施することができます。
『頭痛』
頭痛には下記の2種類があります。
基礎疾患のない頭痛(頭痛の90%で、緊張型頭痛・片頭痛があります)
基礎疾患のある頭痛
このうち、セルフメディケーション可能な頭痛には下記の2種類です。
・緊張型頭痛
・片頭痛(偏頭痛)
緊張型頭痛とは、頭全体がしめつけられるような痛みがあり、その強さは比較的軽症~中程度。首や肩の凝りを伴うことが多く、マッサージや運動による悪化はなく、予兆や前兆がないことがほとんどです。
片頭痛とは、脈に合わせて「ズキン、ズキン」という、中程度からかなり強い痛みがあります。
マッサージや運動で悪化します。吐き気や嘔吐、光や音に敏感になることが多いです。
予兆・前兆として約3割に『閃輝暗点(せんきあんてん)』と言い、視野の中心にきらきらした光が見え、次第にその周辺のギザギザした光が大きくなり、その内側が見えなくなる現象が起こります。
また、頭の片側だけに起こることが多いので、片頭痛も偏頭痛も間違えではありません。
そして
・多少我慢でき、仕事や家事などは何とかできる。
・頭痛の持続が10日未満。
・鎮痛薬の使用が毎週2日以内、または月に延べ9日以下のものです。
激しい痛みがあったり、慢性化したものは対象ではありません。
最近、片頭痛の予防薬として新薬が出ましたのでお困りの方はDrにご相談下さい。
基礎疾患のある頭痛
・今まで経験したことのないよう頭痛
・突然起こる激しい頭痛
・麻痺やしびれ、ろれつが回らない・ものが二重に見える・意識がおかしい等の神経症状を伴い頭痛
・事故または頭部外傷
・高熱を伴う頭痛
・50歳以降に初発、または、5歳未満の小児
疾患名として
- くも膜下出血:頭に雷が落ちたような痛み、などと言える、経験したことのない頭痛。
- 脳内出血:突然の頭痛・吐き気・嘔吐・ろれつが回らない・手足のしびれや麻痺などが見られる。(高齢者・事故・頭部外傷など)
- 脳腫瘍:頭重感や鈍痛が急に強くなり、嘔吐・けいれん発作などが見られる。
- 髄膜炎:発熱・吐き気・食欲がないなどの症状(5歳未満の小児の感冒・副鼻腔炎・中耳炎などが悪化して髄膜炎になることが多い)
鎮痛薬の使いすぎ
3か月以上の期間、定期的に1か月間で10日以上、同じ鎮痛薬を服用しているのは、薬物乱用頭痛になります。
服用していた鎮痛薬を中止し、改善することがありますが、中止期間中に発生する頭痛への対応は医師のサポートが必要になるので、早めに受診しましょう。
カフェインの摂り過ぎ
1日200mg以上のカフェインを2週間を超えて摂取し続けたあと、次のカフェイン摂取までに間隔があいた場合に生じる頭痛のことです。
これをカフェイン離脱頭痛と言います。
カフェインは多くのOTC医薬品やコーヒー・紅茶・栄養ドリンクにも含まれています(コーヒー1杯50mg~100mg)ので、知らず知らずのうちに重複摂取していることもあります。
カフェインの量には充分注意しましょう。
次回はOTC薬の頭痛薬についてお話します。
では、今日も1日前向きに!!
75 「がん」との付き合い方(2)
前回の続きです。
では、何もしないのが最善の治療なのか?
「エコ・エボ」指標
エコ=生態のことで、がんの発生している環境のことを意味しています。
・がん細胞の生息地は栄養豊富か?栄養の少ない不毛の地か?
・免疫細胞の見回りが厳しいのか?
・正常細胞との競争が激しいのか?
・不良細胞が生きやすい有毒な環境か?
エボ=進化のこと。
・がん細胞内に大きな変異パッチが数個あるだけなのか?
・がん細胞内に小さな変異パッチが大量にあるのか?
変異パッチ:がん細胞は、1つの細胞で成立しているわけではなく、変異した細胞集団のパッチワークになっていることがわかっている。
この細胞集団はそのままであればがんにならないが、染色体に異常が発生するとがんになりうる。
というわけで、がん細胞がどれだけ早く進化しているか?生息地でどれほど勢いよく育っているのか?を見極める指標であり、この指標を使って、がんを16のタイプに分類することができた。
点数の低い腫瘍は、資源が少なく多様性に乏しい砂漠のような環境にあるため、進化も繁栄も起こらないもので、1つか2つの標的療法をする。
点数の中間の腫瘍は、正常細胞と共存しているため、正しい順序で正しい選択圧を慎重に与えるか、もしくは免疫療法をする。
点数の高い腫瘍は、多様な細胞集団が、勢力図を常に書き換えていて、出現しては免疫細胞に攻撃されて消されている状態なので、適応療法で長期的コントロールするか、有毒な環境を改善してがん細胞にとって住みにくい生息地にする「エコ療法」を用いる。
適応療法:庭の手入れをすると考える。常に生えてくる雑草を抜いて、きれいな庭を維持する方法。
チャールズ・ダーウィンの「種の起源」の中で、
新種の出現(種の起源)は生物が選択圧に直面して適応と変化を迫られたことによる。
と1859年に発表していたのですから、結局がんも同じことが言えると今頃分かったようです。自然選択、進化論は本当にすごい発見だったと思います。
昨今のように、晩婚化、高齢出産が続けば、私たちが生きている時代は無理でしょうが、人間は高齢でも出産できる、100歳以上生きられるように進化するかもしれませんね。
なぜって、子孫を残し、子育てしている間はがんにならないはずですからね。
私はステージⅣの乳がんと診断されて、抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)による治療、手術、放射線、標的薬による治療を終了して、このブログを書き始めたときに、がんは戦える病気、標準治療は絶対にやるべき、と声高に言いましたが、今、がん研究は、抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)や放射線によるがん細胞への選択圧も考慮する時代になっています。
私は幸いにも3年の間、再発せずに生きることができています。
そして今、がんであることを忘れてしまうほどです。
今後の治療は、標的療法・免疫療法・適応療法が主流になることでしょう。
そして、「がんですか、それなら付き合い方はわかっています!!」と誰もが言える時代になっていくと思います。
がんは長期的にコントロールできる病気になりつつあります。
恐れることなく、気長に頑張りましょう。
そして長期的な病気なら、いつ再発する?と心配せずに、心穏やかに、楽しい人生を送りましょう。
心理的な面も今後はとても大事になってくるでしょうからね。
いくら長く生きられるようになっても、生物は必ず死にます。
死があるから、生きられるのではないでしょうか?
では明日も1日前向きに!!